とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「生ハムきゅうり?」
「冷蔵庫に何もなかったのに、パパっとツマミを作ってくれるところ。ご両親の躾が良かったんだろうなって動きの端々に品もあるし」
「ひどい! 嫌みでしょ!」

 さっきの足で冷蔵庫を締めたことを、そんな風に言わなくていいのに。
 ケラケラ笑う喬一さんを見て、テーブルの向こうの二人はポカンとしている。


「私の仕事は激務です。命も預かります。なので家に帰ってホッとできる相手が欲しいなって思って、今日の彼女を見たらほぼ一目ぼれみたいなものです。彼女なら毎日一緒にいたいなって」
「聞いた俺の方が、恥ずかしくなってきた」

「喬一くん、娘のことをこんなに分かってくれる若者に出会ったことはなかった。うちの娘をよろしくお願いする。今なら外国車二台くらいつける!」
「お父さん!」

 娘を車と一緒に売る親なんて、親じゃない。
 お父さんが何か言うたびに、喬一さんも笑ってるし。

 お兄ちゃんの家庭教師をしていた時も、確かに夜ご飯食べながら仲良く話してたかもしれないけど、外堀が完全に埋められてしまった。
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