とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
降りたのは、いつも使う駅。歩道橋を渡れば駅に着くし、最終には間に合うかもしれない。
でも彼の行動に驚いて、次に何が起こるのか判断できない。
大きな満月が、今すぐ頭上に落ちてきそうに私たちを優しく照らしてくれている。
少し冷たい風に気づいた彼が、自分のコートを私の肩にかけてくれながら、意地悪に微笑む。
「君が恋愛経験が皆無って忘れてた。駆け引きとか打算とか、やめる。正直に感情をぶつけるよ」
「打算……やっぱりあったんですね」
頭にタライではなく満月が落ちてきたようなショック。そうだよね。開業したばかりのお医者さんだ。私の父と仲良くして損はない、よね。母同士が仲いいなら、兄の呼び出しに応じないわけもないし。
「あるよ。どうすれば君を浚っても誰も俺に文句言わないか、まずは外堀を埋めないと、とね」
「文句? 喬一さんに文句言う人なんていないでしょ。完璧だし」
慎重な人なのかな。石橋を叩きすぎて壊して損をしてしまう人。