とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「う、うん。もう帰るの?」
「紗矢もよかったら、合コン……行かないよね」
ロッカーに向かいながら、二人に私は微笑む。
「ごめんね。今日は社長と代表取締役会長と食事会なの」
「それってつまり」
「そう。家族で食事」
同僚の二人は『大変だね』と苦笑いして私を労わってくれたが、ごめんね。
食事会というのも少し語弊がある。
「せっかく紗矢は綺麗なのにこのままじゃ、本当に結婚できないよ」
心配してくれたのは、同僚でもあり大学からの気の置けない友達でもある、藤森小春。
私が人目を惹く容姿をしているから、合コンのエサに使おうとしていた清々しいほどの肉食系女子だ。
その清々しさと遠慮しないで言い合える性格のおかげで、私もなんでも話せてしまう。
見た目は小動物みたいに小さくて可愛いのに、高級な肉しか食べない肉食系の彼女は、合コン相手もいちいち一流企業とかスポーツ選手とか派手だ。
そんな場所に私も行けば、本性がボロボロと出てしまって恥をかくだけ。
しかも今月は趣味で本当にお金がないので、タワーホテルの高級バーでの合コンの会費さえ払える自信がない。
「ありがとう。いつか親と兄の目を潜り抜けて見せるわ」
じゃあ、と定時5分を過ぎてしまい急いで着替えて駅へ向かう。憐れんでくれる二人の視線が刺さる中、見えなくなったら全力で走ろうと決めていた。
カラカラと飛んできた枯葉を踏むと、冬の訪れる音が聞こえてきた。