とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。



電車で二駅先にある、高級マンション『アーリントンタワー』の18階にある兄の部屋へと向かう。

経営者が外国のホテル王らしく、裕福層を満足させるために建てたような、超高級な施設完備、家にほぼ帰れない兄が何不自由しなくてもいいぐらい、食事もクリーニングもハウスクリーニングも電話一本でやってくれる夢のようなマンション。

 私は趣味に没頭してお財布の中身が寂しくなると、兄の家にお邪魔する。


 兄が社長で、父が代表取締役会長を務める、うちの南城医療機器総合メーカーは、医院の建物から内装、家具などのインテリアの空間デザイン、そして医療機器や医療器具の紹介や仲介、中古医療器具の買取販売などを扱い、医療コンシェルジュと呼ばれるような大企業。


 父が楽天家で後先考えずに事業を拡大させ続けてきたせいで、社長である兄がほぼ尻ぬぐい。


 私は最初は兄の秘書をしていたのだけど、新しく中古医療器具の売買に手を出したせいで、事務が深刻な人手不足になり手が回らなくなり現在はそちらが落ち着くまで手伝っている事務員だ。信用がない未知の場所に、社長の身内が入ることで、少しは安心感が出るらしい。

「あれ、お兄ちゃん、帰ってるじゃん」

 玄関を開けると、踵がすり減っていない真新しい革靴がきちんと端に脱いである。

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