とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
この歳でゲーム画面の相手に夢中になるぐらいしか趣味のない女だ。
料理もこの通り、喬一さんの方が一流なんだから。
「私が良かったのは、料理ができないから、自分で作れるって思ったからですか?」
私が食べているのを、蕩けんばかりの笑顔で見ていた喬一さんが急に真面目な顔になった。
「ちょっと待ってて」
立ち上がって、ソファに置きっぱなしになっていたカバンから何かを取り出してくる。
その顔はどこか気まずそうだ。私を打算で選んだと言ってくれていたのだから、料理のこと以外もきっとあるはずだ。
「君はこれを覚えている?」
コトンと音を立ててテーブルに置かれたものは、紫の水玉模様のお弁当箱だ。
さっき日色先生が言っていた、年季の入ったお弁当箱。
確かに、喬一さんが自ら買ったようには見えない。
女性もののファンシーな小物屋にありそうな、平凡なお弁当箱。
「このお弁当箱、君がくれたんだけど」
「え!」
「その反応は、まあ、そうだろうと思ったけど」
苦笑しつつも、彼は席に座って自分の分のご飯を食べだした。
パスタをフォークに巻いて口に運ぶ姿さえも見とれてしまいそうで、頭を振る。
「いつですか! 全く覚えてないんですが……っ」