とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「残念。君は悪い男に引っかかったよ」
頬を撫で、指先が唇まで降りてくる。
「最初に君を家に上げた時に、抱こうと思ったんだ。君みたいに真面目な子はさっさと既成事実を作って逃がさないぞ、と」
「わ、悪い男です」
確かに悪い男だ。納得していたら、クスクス笑われてしまった。
「そうしたら、出勤要請だろ?」
「悪いことを考えるからですよ。それから私を押し倒そうとすると、必ず救急車のサイレンです」
つまり私と喬一さんはいまだに清い関係だ。
昨日、婚姻届けを提出して『古舘 紗矢』になってしまっているのに。
緊急オペでそのまま彼は出勤して、帰ってこないまま挙式に駆け付けたんだから。
「昨日と今日は、良い子だったろ、俺」
「まあお仕事は頑張っていました。疲れ様です」
おずおずと手を伸ばして、頭を撫でると彼は目を細めて私の腕を掴んだ。
「じゃあご褒美をもらおうか」
「ご褒美」
「苗字ももらったし、君の初恋ももらっちゃったみたいだけど、残念だね。悪い男は全部が欲しいらしいよ」