とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
二人は、そんな冷たい喬一さんに慣れているようで、『やっぱ駄目かあ』とさっさと帰ってしまった。
嘆息する喬一さんは、それでも一応ちゃんと電車に乗れたのか目で少しだけ追っていた。
優しいのに、それを全く感じさせない対応で、どんな言葉をかけようか迷う。
「喬一さん」
おずおずと声をかけると、冷ややかだった顔に急に表情が乗る。
私の方を見ながら、ふっと小さく笑った。
「今日は寒いな。鼻が真っ赤だ」
「えー、嘘」
鼻を押さえると、手袋を外して右手で摘ままれた。
温かい彼の指先に、笑う。私の冷たい手も掴むと自分のコートのポケットに入れてくれた。
そのまま一緒に歩き出す彼を見上げる。先ほどの面影はない。
「さっき、クールで冷たい外科医の古舘先生を見ました」
「見られたか。妻がいるのにデートに誘う酔っ払いは、質が悪い」