とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「喬一さん、うちの家とか私の前では優しいのになんであんなに仏頂面なんですか」
「仏頂面か。うーん。別にさっきの会話に愛想笑いが必要じゃなかったから」
苦笑しつつ私の荷物を持とうと手を差し出してきた。自分の方が出張帰りでカバンの中身が重たいのに。私の荷物は、喬一さんへのプレゼントなので、大丈夫だからと不自然にならないように後ろに隠す。
「えー、私と家族の前では愛想笑いなんですか」
「いや、素だけど。愛想笑いしてもいいことがないと、親戚づきあいで嫌というほど知っているからさ。それに俺の仕事は緊張感をもってやる仕事だし、普段は顔を引き締めてるのかも」
「確かにそうですね」
喬一さんが言いにくそうに言うので、それ以上は聞かなかった。彼の中では親戚というものは、余程煩わしいものらしい。
駅を出て、喬一さんのコートのポケットに入れていた手を自然に出すと、手を握られる。
その様子がショーウインドウに映ると、クリスマス前の街中で違和感なく恋人のように見える。この前まで、恋愛を諦めていて、ゲームに夢中だった私が、街に溶け込んでいる。
喬一さんもさきほどの顔とは打って変わり、にこやかだ。そんな彼の隣に並ぶのが少しだけ誇らしかった。夫婦になったんだから、大人な彼にもっと近づけるように頑張ろうと思えた。