とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
タクシーに乗って五分ぐらい行くと、オフィスビルに案内された。
そこの二階に、オランダ料理の店があるらしい。絶対に一見さんじゃ見つからない場所。
レトロな木でできたドアを開けると、中には賑やかな洋楽が流れ、八席あるカウンターは満員で、終始笑い声が聞こえてくる。
クリスマス前日だからクリスマス仕様かと思ったら、オランダはクリスマスは12月の始めにあるらしく、イベントは全部終わってしまっていたらしい。レジに小さなクリスマスツリーがあるのみだった。
「こっち」
喬一さんがオーナーに『妻です』と説明した瞬間、真っ赤になって頭を下げるのが精いっぱいだった。オーナーの白石さんは喬一さんと同い年で顎鬚の似合う、豪快に笑う人だった。
そして更に二階に上がって予約席と書かれた席に案内してくれた。観葉植物を背に夜景が見えるカウンター席で隣り合わせで座る。隣の席とも観葉植物で隔てていて、十分にスペースがあり半個室に近い。
こちらは、二階の笑い声を遠くに聞きながらしっとりしたクラシックが流れる大人な雰囲気で、壁にはいろんな船の白黒写真が飾られている。オーナーの白石さんのおじいさんが乗っていた、オランダと日本をつないでいた貿易船の写真らしい。