とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。


「ああ。恥ずかしい。いまだに妻と奥さんって言われると照れます」
 まだ熱い頬を押さえると、コートをかけていた喬一さんがクスっと小さく笑う。

「可愛いから、一生慣れなくていいよ」
「うわ。甘い。旦那さんが今日も甘やかしてくる」
「甘やかしてないでしょ。毎日これだから、これが基本」

 つまり私に毎日砂糖を塊ごとゴリゴリ食べろということらしい。
 食べるけども! 沢山食べるけども。

「……そんな旦那さんは、どんなことで喜んでくれるんでしょうか」

 兄の家庭教師だった人。私にはいつも優しかった人。
 けれど、冷たくクールだと周りに印象付けるように、壁がある人。
 私が知らないような苦労をしてきただろうに、私には極上に甘い人。

「紗矢の言動ならなんでも嬉しいけどね。その荷物、こっちに置きなよ」
「あ、いや、これは」

 明日貴方に渡したいものです、と言えるわけもなく挙動不審になってしまった。

「ん?」

 駄目だ。私、明日まで誤魔化せる器用さがない。前日なのは申し訳ないけど、徐に紙袋を差し出してしまった。中身を出した方がいいんだろうけど、でも恥ずかしくてそのままテーブルに乗せて喬一さんの方へ押した。
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