とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
「やっぱ家で渡せばよかった」
「いや、生ハムきゅうりは思い出すと真っ青になったり真っ赤になったり紗矢が可愛いから、ついね」
「違いますー。喬一さんのその笑顔、私以外に見せるのが勿体ないなって思っただけです」
えい、ともう一度小さく蹴ると今度は当たった。なのでどうだ、と顔を見ようとしたら、喬一さんが片手でまた顔を覆っていた。
「弁慶の泣き所にあたりましたか」
本当に軽く当てたはずなのに。恐る恐る顔を覗き込むと、耳が赤くなっていた。
なので椅子を喬一さんの方へ寄せて、耳に触る。真っ赤で熱い。
「はずれ。食事なんて放り投げて、デザートが食べたくなった」
伸びてきた手が、私の手を掴んで指先を絡めてきた。
喬一さんの長い手が好き。その長い手が、私の髪を、触るのも。
シーツを私の手ごと掴むのも、私の体に触れるのも、全部。
デザートと言われ、彼の指先から伝わる体温に、初夜の熱を思い出す。
「……帰ったら食べてくださいね」
熱を孕んだ瞳で私を捉えると、彼の顔が近づいてきた。いつもの余裕が感じられないのは、微かに当たった眼鏡からわかる。触れるだけのキスなのに、お互いの心臓は破裂しそうに大きく高鳴った。
それから運ばれてきた美味しいパテとワインに気持ちよくなった私たちは家に帰ると、点々と服を脱ぎ散らかしお行儀が悪いまま寝室へ向かったのだった。