*君に溺愛*
旅行のしおりは、まあ、完成し、ルナちゃんと共に配り始めていた。

「王子とルナちゃん、お似合いだよね」

空気読んでる?
そう、切り出したのは、清水直くん。

「可愛いカップルだよね」

まるで、奴を挑発してるかの様なそんな気もする。


「カップルは、俺らだから」

無愛想に、高城が溢した声。
苛立っている様な声。

「そうかな?
みんな、そうは思ってないんじゃないかな?」

怖じけ付かない彼は、やたら高城に関わる。

「はあ⁉何言ってるか分からない」

きっと、出ていきたいんだろう。

この場から。
だけど、ルナちゃんを置いてはいけない。

離れたらいけない、気持ちが邪魔して、出ていけない。

「王子とルナちゃん、最近噂で持ちきりだよ?」

噂…………。


「知らない、そんな噂知らないけど聞かないしなあ?」

高城は、慧に話を振る。
少しだけ、彼の顔色が変わった。

「何?慧」

それを高城は、見逃さない。

「池田?なんか、知ってるのか?」

ビクリ、と体が震えたアミちゃん。


「君が知らないだけだよ、君の前じゃ誰も言わないよ?」


そう、高城くんだけ知らないだけ。

みんな、知ってる。
別に、秘密でもなんでもない。
ただ、こう言われてるだけ。

「王子とルナちゃんって、付き合ってるんじゃないの?お似合いだよね?………そう、言われてるよ」


ただ、それだけ。

「まあ、現に付き合ってるのは君だし、噂だし気にしないでよ」


なんて、大人、気取って見る。
彼の顔色が変わったのが、分かった。



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