*君に溺愛*
17時。

随分、暗い六月中旬。

「よし、これでいいかな。
みんな、遅くなってごめんね。
はい、ジュースで悪いけど買ってきたよ‼
どれでもどうぞ」

会議室に居なかった廉先輩は、大きな袋にジュースを入れて、持ってきた。

「はい、お疲れ様」

廉先輩は、私に缶ジュースを差し出した。

「廉先輩、サンタさんみたいです」

サンタさんみたいな廉先輩。
泣きそうになる私の頭を撫でてやる。

「俺が、送るよ。
いい?」

「は、はい」

廉先輩は、優しい。

二人になるな、と言われたのに………その彼はここには居ない。

いつもと、変わらない廊下。
いつも歩いた廊下。
見慣れた、教室に足を踏み入れて鞄を手にした私。


すぐ隣の君は居ない。
「ルナ、一緒に帰ろうか?」

アミが気を使い聞いてくれる。
その横の慧くんも、微笑んだ。
「大丈夫、廉先輩に送って貰うから」





「明日、休みでしょう?
旅行の服、見に行こう‼」


"明日、デートしない?旅行の服見に行こうよ"ーー

君とした会話。

「明日は…………うん、行きたいな」


きっと君は、忘れている。

きっと、一緒には居てくれない。

「じゃあ、電話するね‼バイバイ!!」

ニコリ、と笑うアミに、私は笑いかけた。
これが私の精一杯。


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