Jelly
『Y.Narisawa: 飯。もう無理、俺ほんとに餓死しそうなんだけど』

『R.Kaminaga: こっちのタスク今日中に終わるの』
『Y.Narisawa: 終わらせる!』

 俺が送信した途端、真後ろのチェアに座っていたやつが立ち上がった。神長廉(カミナガレン)だ。管理する側とされる側という違いはあるものの、プライベートでは気の置けない友人だ。

 女の子の心をごっそりさらう整った容姿は、見るからに出来るヤツ。実際に恐ろしく頭の回転が速いんだけどそれは度を越していて、どんな美人もアルファベットと数字の羅列にしか見えないという勿体無い男だ。

 開発メンバーの一人がちらりと神長に目を送る。

「さっきのバグは外出から戻ったら見てみるので。他の部分から進めてください」

 心の不安を読み取ったように声を掛けて、神長はスマートフォンをポケットに突っ込む。年上のエンジニアはモニターに視線を向けたまま、軽く頭を下げた。
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