Jelly
「俺も神長みたいに頭良かったらなあ。仕事なんてちょろいのに」
「俺には俺なりの苦労があるんだよ、一応言っとくけど」

 神長の脚が横断歩道のボーダーを颯爽と越えていく。いつの間にか信号は青だ。
 そういえば――、俺は慌てて財布を開いた。

「ごめん、俺六百円しかない。昨日千円札見たような気がしたんだけど」
「多分札はブラックホールの中に落ちてるな」

「……まさかブラックホールって俺のリュックのこと言ってんの?!」

「おごるよ、その代わりしっかり働けよ」
 神長は振り向くと、涼しい顔でいかにも上司らしい言葉を投げてきた。
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