ビーサイド
席に着くとすぐに、涼くんはハンバーグにすると言った。
「決めるの早いね」
「そ?朱音さんはさー優柔不断でしょ」
「え、なんでわかるの」
図星だ。
昔から何をするにも早く決めろとよく洋介に急かされていたし、しまいには人に決めてもらうこともしばしば。
しかしなぜ、涼くんに見抜かれてしまったのだろう。
まだメニューを見て5分と経っていないはずだ。
「俺の知り合いに似てるから」
私の問いにそう答えた彼は、笑っているのに、なぜかその顔は今にも泣きだしそうに見えた。
そしてその瞬間、私の脳裏にはあの小人の踊るカーテンが浮かぶ。
なんの根拠もない。
ただなんとなく、これ以上踏み込みたくない、そう思った。
「私もハンバーグにしよっと」
この話題を終わらせるために、私はまったく気分でもなかったハンバーグを頼むことにした。
昨日からずっとドキドキしっぱなしだから、心臓がおかしくなっているんだろう。
こんなに胸が痛むのは、きっとそのせい。
「じゃあ半分あげるから、朱音さんトンカツにしなよ。俺トンカツも食べたい」
― そうやってなんにも気付かないで無邪気な顔して。
こっちの身にもなって欲しい。
半分こなんて、そんなの彼女とじゃなくてもするものなの?
「…じゃあそうしようかな」
そして結局また私は、彼の言いなりになった。