ビーサイド
そんな合コンとは思えない重い話をしているうちに、あっという間に2時間が経とうとしていた。
「俺からも涼にちゃんと言っとくから。なんかあったらいつでも連絡して」
冒頭とはまるで別人のように落ち着き放った慎太郎さんと連絡先を交換すると、彼はお会計してくる、と席を立った。
あんなに騒がしかったのに、あれは彼のキャラなのかもしれない。
23歳にしてはしっかりしているし、なにより人の気持ちに敏感な人であった。
そして空いた私の隣の席に、あの甘い香りとともに涼くんが座る。
「ど?楽しめた?」
一口ちょうだい、と我が物顔で私のサワーを飲んだ。
なんだか今は彼とうまく話せる自信がない。
恋とかじゃなくたって、そういうものだろう。
「ん。みんな話しやすい人でよかった」
さっき慎太郎さんに聞いた話を問い詰めたいような気持ちもあったが、それをしたところで何が変わるわけでもない。
というか、変わってしまって寂しくなるのは自分である。
遊びなのだから。
別に理由なんてなんでもいいと思うことにした。
「理久といい感じだったじゃん」
いつもより突き放すような言い方は、私への嫉妬ではない。
「距離感おかしいよね。ドキドキしちゃった」
努めて明るくそう返したが、それに対する返事が一向になく、不思議に思ってつい彼の顔を覗いてしまった。
「…よかったじゃん。理久モテるから大変だよ~」
― なにその顔。
頬杖をつきながらこちらを見るその顔は、とてもよかった、という表情には見えない。
涼くんのあの瞳に捕まった私は、やっぱりまた視線を逸らせなくなった。
さっき理久とおでこを合わせたときよりも、ずっと今の方がドキドキしている。
やっぱり彼の瞳には魔力があるんだ。