ビーサイド
「朱音っ」
はずんだ声に振り返ると、そこにはオーラを放つ理久がいた。
やはりイケメンは目立つ。
「すごいね、改札の中で会うとは」
口元がつい緩んでしまったことを悟られぬよう慌ててそう言うと、理久もまたにこっと微笑んで、すぐわかったよと言った。
どこまでも可愛い。
理久はハーモニカ横丁に行きたいらしく、その中で私がよく行く焼き鳥屋へと案内した。
「ここで大丈夫?食べれないものとかない?」
普段の私は、割と誰に対しても面倒を見てもらう方なのだが、なぜか理久相手だと私がしっかりしなくては、という意識に駆られる。
可愛らしい外見がそうさせるのだろうか。
「全然平気。めっちゃ雰囲気いい」
どうやらお気に召したようで安心した。
「朱音ビールにする?」
「んー今日はレモンサワーで」
二日酔いを引きずった私は、今日は軽めに飲もうと決めていた。
理久はドリンクを頼むとすぐに、私の顔を覗きこんだ。
そして言う。
「昨日、大丈夫だった?」
待ってましたとばかりに理久の気遣いに甘えた私は、それからドロドロと吐き出すように昨日のことを話し続けた。
その間理久はずっと、うんうんと頷いたり、えーと顔を歪めたり、ちゃんと話を聞いてくれていると実感できるリアクションを取ってくれて、つい私は話しすぎてしまう。
「なんかもう、どうしたらいいかわかんなくなっちゃって」
軽く飲むと決めていたくせに、もう空になったグラスを見て我に返った。
「あ、いやごめん。話しすぎた」
「いいよ、何でも話して。それにしてもこじらせてるね~」
理久はたぶん私のペースに合わせてくれたのだろう。
残っていた自分のビールを一気に飲み干して、レモンサワーを2つ、カウンター越しに頼んでくれた。