ビーサイド

「白石さん、理久くん」

30分ほどで着いた病院の入口で待っていてくれた真由子ちゃんが、俺たちを呼んだ。

「朱音は?どうなの?」

言葉も出ない俺とは対照的に、理久は真由子ちゃんに状況を確認する。

「頭打ってるらしくて…今検査中。だけど意識もあるしたぶん問題ないだろうって言われたみたい」

真由子ちゃんは泣きながらそう言った。

「………生きてんだ…よかった…」

自分でも足の力が抜けていくのがわかった。
その場にしゃがみこんでしまった俺の姿は、絶対に朱音さんには秘密だ。

真由子ちゃんに案内されて朱音さんの病室まで行くと、理久と真由子ちゃんの足が止まった。

「涼が先行きな」

俺は待ちきれなくて、その言葉をそのまま受け取って病室のドアを開ける。


< 88 / 96 >

この作品をシェア

pagetop