ビーサイド

クリスマスの夜、まさか自分の身に降りかかった災難は、とんでもない幸せを運んできた。


真由子との電話を終えて、コンビニに足を踏み入れた次の瞬間、大きな衝撃音と悲鳴が耳に入り、気付いたときには病院にいた。

直前に電話をしていたためなんだろうか、第一報は真由子に入ったらしく、両親と真由子たちは一緒に私の元へ駆けつけてくれた。
そのときのみんなの表情に、自分がとんでもない目に合ったことをようやく自覚した。

「あんた、今年厄年だっけ!?」

慌てた母は、開口一番そう言った。
大丈夫?とか痛いとこは?とか、普通なんかもっと心配したようなこと言いそうだが、いかにも母らしい。

確かに思い返せば、今年はとことんついていない年だった。

年明け早々インフルエンザにかかって真由子たちとの旅行には行けず、4月には豆太の相棒だった桃(猫)が亡くなった。
6月頃だったか、洋介の浮気が決定的になって9月の自分の誕生日に振られ。

それから涼くんに出会って少しは上向きになったように思えたが、ボロボロになって今日のクリスマスを迎え、極めつけに事故に遭うという。

「朱音、まだまだだよ…32歳が前厄…」

むーちゃんの言葉には背筋が凍った。
これ以上の災難があったら、いよいよ私は命が危ない気がする。

そして両親は先生に呼ばれて病室を出ていき、真由子とむーちゃんは飲み物を買ってきてくれると言って、私は部屋に1人になった。

「……ついてない…」

頑張ろうと思った矢先の出来事に、私の心は折れかかっていた。

急いては事を仕損じるとは、まさにこのことを言うのだろう。


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