総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
どんどん欲張りになっている自分がいる。
……優しくありたいのに。
「ユウちゃんは落ち込むことないってば。ここに逃げたくなるような――元いた場所に還れない“理由”があるわけで。根源までたどるときっと、そんな環境を作った“オトナ”の責任だよねぇ。ユウちゃんは、守られて当然なんだからね?」
「……燐さん」
「あれー。でも、待てよ。ここにユウちゃんいるのがバレたら愁は“家出少女をかくまっている青年M”もとい“誘拐犯M”だねぇ。受験大丈夫? 人生終わらない?」
――!
「しゅっ……愁さん、わたし……」
(ここ、今すぐ出たほうがいいんじゃ?)
脳内に、大勢のマスコミがこの家を包囲する映像が流れる。
手錠をかけられる、愁さん。
警察に保護される、わたし。
愁さんは受験どころじゃなく。
わたしは家に連れ戻され、またあの仕打ちを受けることに――。
(そんなことになったらおしまいだ)
「少女を発見する側の愁が。隠してるなんて知れたらパパもうカンカンだろうね」
(発見する側……?)
帰りたくないとか。ここにいたいとか。
あんな生活に耐えられないとか。
向こうは優しい世界じゃないとか。
考えてみるとぜんぶ――、自分を守るための言い訳だ。