総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)



どんどん欲張りになっている自分がいる。


……優しくありたいのに。


「ユウちゃんは落ち込むことないってば。ここに逃げたくなるような――元いた場所に還れない“理由”があるわけで。根源までたどるときっと、そんな環境を作った“オトナ”の責任だよねぇ。ユウちゃんは、守られて当然なんだからね?」

「……燐さん」

「あれー。でも、待てよ。ここにユウちゃんいるのがバレたら愁は“家出少女をかくまっている青年M”もとい“誘拐犯M”だねぇ。受験大丈夫? 人生終わらない?」


――!


「しゅっ……愁さん、わたし……」


(ここ、今すぐ出たほうがいいんじゃ?)


脳内に、大勢のマスコミがこの家を包囲する映像が流れる。


手錠をかけられる、愁さん。

警察に保護される、わたし。


愁さんは受験どころじゃなく。

わたしは家に連れ戻され、またあの仕打ちを受けることに――。


(そんなことになったらおしまいだ)


「少女を発見する側の愁が。隠してるなんて知れたらパパもうカンカンだろうね」


(発見する側……?)


帰りたくないとか。ここにいたいとか。

あんな生活に耐えられないとか。

向こうは優しい世界じゃないとか。


考えてみるとぜんぶ――、自分を守るための言い訳だ。


< 10 / 271 >

この作品をシェア

pagetop