総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
毒矢のような燐の言葉が心臓に突き刺さる。
「……幻より? ねぇだろ」
「ユウちゃんのこと少し調べた。資産家の娘で、幼い頃に親戚に引き取られてる。不満がなきゃ家出なんてしない。わかるよね。あの子が逃げ出したくなるような環境だったことくらいは。ユウちゃんの家にはなにかある」
「…………」
「愁が、ユウちゃんを救ってやればいい。簡単でしょ。君なら弁護士も、探偵も、警察のお偉いさんだって動かせる。幻なんかよりずっと合法的に。ユウちゃんを救い出すヒーローになればいい」
「仮にそれがうまくいってユウが救われたとして。幻への気持ちに揺らぎなんてないだろう」
見ていればわかる。
ユウは、幻が、いいんだ。
「そうかな。気持ちなんて状況次第でいくらでも変えられるよ。自分のために一生懸命な愁にコロッとやられちゃったりして。それでも変わらないなら、外堀から埋めていけばいい」