総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
俺は
俺は――。
「……俺は、ユウの兄貴だ」
「頑固だね」
ああ、これだけは譲れない。
生まれてからろくに自分で選択なんてしてこなかった俺だがな。
これは胸張って言える。
夕烏と幻の愛は本物だ。
二人を見守りたい。
たとえ俺の気持ちを――殺したとしても。
「欲しくないの」
死ぬほど欲しい。
「ヤりたいでしょ」
NOといえば嘘になる。
けれど、
あの子の気持ちを無視してまでしたくない。
「そんなに嫌われるのが怖いの? “いいひと”でいたいの?」
「うるせぇよ」
「守るものなんてあるの?」
「……ほっとけ」
燐の笑顔が引きつっているのがわかった。
綺麗な顔が歪んでいく。
それでも俺は不思議と
コイツは美しいと感じてしまった。
素顔を晒していることに本人が気づいているかはわからない。
「じゃあなんでさっき逃げたの」
「……それは」
「今、そんな風に正義感振りかざしててもさ。あの子の前ではキミは弱い。惚れてるんだもん。過ちは起きるかもね」
「起きない」
「ひとつ屋根の下で眠るあの子のこと考えながら自分を慰めたりしてるんじゃないの。ねえ」
「やめろ」
「想像してよ。キミに夢中になる。キミにだけ頬を染める、ユウちゃんの姿を」
「……っ」
「辛いよね。幻のことしか見えてないあの子といるのは。そうだ。もうぶっ壊しちゃおう。みんなバラバラ。誰も幸せにならない。その方がよくない? このまま身を引いて、応援して、自分だけ不幸なんてさ。ただの偽善者じゃん」