総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


「あー、ごめん」


燐さんが携帯を眺めながらつぶやいた。


「呼び出し入った。割と重要性の高いやつ。ということで、メイク講座は明日以降でもいいかなユウちゃん」


燐さんが忙しいのも、突然予定を変えることも、珍しくなさそうなのに。


「おい、燐」


(愁さん?)


愁さんが、とても焦っているように見えるのはどうして?


「なにー。オレ、黒梦の飼い猫だけど。首輪つけられてるつもりないよ?」


(……あ)


「俺だってつけた覚えねぇよ」


燐さんが、“オレ”って言った。

いつもと雰囲気が変わる。


どっちの燐さんも、燐さんで。

どっちの燐さんも、すきだ。


見つめ合う二人に緊迫した空気が流れる。


それを破ったのは――。


「戻ってくるからね、ダーリン♡」


燐さんが、愁さんにウインクをした。


「誰がダーリンじゃ」

「ユウちゃん、次こそは双子コーデして。双子デートして。双子で朝まで過ごそうね」

「はい……!」

「いや朝までってとこ余計だな?」

「嫉妬しないでよー、愁」

「するか」


燐さんが立ち上がりざまにチラリと愁さんを見る。

愁さんは、燐さんを見ない。


(……?)


どうしたのかな。


二人が近くなったと思ったのに。

突然、よそよそしくなった。


「待てよ」


出ていこうとする燐さんの背中に向かって愁さんが言った。


「戻ってこねぇと承知しねーぞ」

「万が一囚われたら、キミが迎えに来てね」

「言われなくても」


二人になにがあったかわからない。

けれど、たしかに二人の絆は深まっていて。


また、男の子っていいなって。

そんなことを感じずにはいられなかったんだ。


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