総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


きゅっと、胸の奥が苦しくなる。


「幻か」

「え……」

「ほんと、かなわねぇな」


(……愁さん?)


「それじゃあ。夕飯は、お願いしよう」

「はい……!」


でも、愁さんが。


愁さんがっ……。


「あの、」


思わず背を向けた愁さんの服をつまんでしまったのは。


このまま、

愁さんを行かせてしまっていいかわからなくなったから。


「……っ」


かける言葉は、見つかっていない。


振り返ってくれない、愁さん。


怒ってる? 泣いてる?


それとも


「大丈夫、ですか」

「離してくれ」


どっちとも、ですか。


「わたしが、無理したからですか。ごめんなさい。しんどいこと、隠して、ごめんなさい」


傷つけたかったわけじゃないんです。


「違う」

「それじゃあ……なんで……」


愁さんの前に、まわりこむ。


「顔見て、話してほしいです」

「……それ」


愁さんの視線は、なぜか

わたしの目じゃなくて首元に落とされる。


「君は、ここにいるべきじゃない」

「……え」

「俺じゃなくて。幻のとこに行けよ」
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