総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
ねえ、愁さん。
この扉あけてください。
――足音が聞こえた、次の瞬間。
ガチャ。
「……愁さん?」
扉が開き
姿を現した愁さんに
腕をつかまれ、中に招かれる。
――バタン。
扉は閉められ
「……愁さん」
――愁さんとドアに、挟まれた。
距離が、近い。
逃げ場もない。
「俺、わかった気がするよ」
「なにが……ですか?」
「幻が君を俺にあずけるとき。あんなことを言った本当の理由」
「あんなこと……」
【兄貴みたいに思えばいい】
「お兄ちゃんみたいに思えってやつですか?」
「あれは俺へのメッセージなんかじゃなかった」
「え……」
「“意識するな”って命令だったんだ。ユウに対して」
――!?
「一度でも。俺を意識したことあるか?」
「意識って……そんな……」
「幻はわかってないな。ユウが無防備になればなるほど、俺は意識しちまうってことを」
愁さんの顔が、見られない。
「君は俺が好きか」
「はい」
「俺もだ。俺も、ユウのことが好きだ」
顔をあげると
愁さんは、いつになく真剣な顔つきで。
「だがな、ユウ。お前の“好き”と、俺の“好き”は、ちがう」
「え……」
頭が、真っ白になった。
「手に入れろ、か。簡単に言ってくれるよな。こんなに近くにいるのに……なんにもできやしない」