総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「……あの」
「こんなものつけられて」
「えっ、」
髪を耳に、かけられ。
「見えそうで、見えない。だけど見えなくもない」
「……?」
「身に覚え、ないとは言わせない」
ふと、記憶がよみがえる。
何度も何度も
幻さんに、時間をかけて愛されたことを。
「あっ……」
【幻さん。これは、なんですか?】
【お前が俺のだってシルシ】
【いっ……、いっぱいつけすぎです!】
【見えるとこにはつけてねえけど】
【で、でも】
【はは】
【もう】
【嫌か?】
【いえ。むしろ……】
【ここにも、つけとくか】
【ひゃ、】
――そういって首元に少しだけ長いキスをされて。
「き……す、まーく」
「困らせて悪かった」
わたしから離れる、愁さん。
「出ていけ」
「出ていきません」
そんなに辛そうな愁さん置いて、出ていけるわけないじゃないですか。
今にも壊れちゃいそうじゃないですか。
「幻さんのことは、もちろん、好きですよ。でも、だからって愁さんとの時間が大切じゃないことにはなりませんから」
「酷だな」
「え?」
「俺を歪ませたいのか、君は」
「そんなつもりは……」
「選んだのは俺なのに。さっそく揺らいでる」
「揺らぐ……って……」
振り返った愁さんは
怒っても
泣いても、いなくて。
これまでで一番優しい笑顔をわたしに向けてくれて。
「愁さ――」
「愛してるといえば、伝わるか」