総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「燐」
ずっと黙っていた幻さんが口を開いた。
「おかしなもん持ち込んでねえよな」
幻さんまでそんなこと聞くの?
「もちろん。すごい念入りに調べたし」
(……?)
「トラックは」
「知り合いに運転頼んだから、ボクがここに来たことは簡単には調べられないよ」
「お前なりにケジメつけてきたってことだな」
「うん。改めて、お世話になりまーす」
「ああ。こちらこそよろしく」
そういって、幻さんが燐さんになにかを投げる。
燐さんがキャッチしたのは、携帯電話だ。
「ありがとー、幻。これこれ。名刺サイズのシンプルなスマホ、欲しかったんだよねぇ」
「……燐にも買ってやったのか?」
愁さんが言いたいのは、わたしにも買ったのに、ということだろう。
「契約だけだよー。料金は、ボクから幻に払うって約束したから」
「なるほどな。いつの間にそんなこと頼んでたんだ」
「今朝だよー。ね、幻?」
「ああ。昼間、時間あったからショップ寄ってきた」
「過保護なやつめ」
「お前もな」
そう答えた幻さんが、微かに笑う。
「幻が笑いやがった。……ユウのこと以外で」
ぽつりと愁さんがつぶやく。