総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


「……っ」


あと、少し。

あと少しで唇と唇が、触れそうだった。


顔を背け、それを、回避した。


ねえ、燐さん。

本気でやろうと思えば、今すぐ、わたしとキスできますよね。


力だって、経験だって、わたしよりありますよね。


でも、それをしないのって。


なんだろう。


まるで、わたしは

試されているような――。


「逃げないでよ。ボクから」


燐さんの言葉に、胸が、張り裂けそうになる。


「……やめましょうよ。こんなの」

「誰が決めたの。恋人としかキスしちゃいけないって」

「だめ」

「それ言われると、止まらなくなるよ。弱いんだ。怯えた顔と、絶望した顔。これ、直らないんだ。無性に見たくなるんだ。自分でも――なにがそんなにいいのか、わからないんだけど」


頭を横に小さく揺らし、拒絶の意を示す。


「同情のキスもできない?」

「キスはっ……同情してするものじゃない」


いつか、燐さんが心から愛する人と、結ばれたときに。

その人と、してもらいたいって願うのは、わたしの押し付けなの?


「断る理由わからないなー。減るものでもないし。手は握らせてくれてるんだから、おんなじでしょ。皮膚と皮膚の触れ合い。別にロマンチックなやつ求めてないし。さっさと重ねちゃおうよ」

「やっ、」


頭のうしろに、手をまわされる。


「あー、その顔、最高。キスだけで終われなかったらごめんね?」

「……!」

「怒ってる顔も。かわいーね」

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