総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


出会ったときから、そうだった。


あの夜、渋谷で。


【そっか。ワケありなんだー】

【だったら、おいで】


声をかけてくれたあのときも。


そこにいたくない。

だけど帰りたくない。


居場所が、ない。


そんなわたしの気持ちを汲み取ってくれた。


「わたしが変わるきっかけを作ってくれたのは、燐さんですもんね」

「そうー?」

「はい。本当に、感謝してます」


燐さんが、声を出さずに優しく笑う。


「キミは可愛い。可愛いけど、憎いよ」


心臓が、大きく揺れた。


「燐さんは、わたしが……憎いんですか」


ときどき、わからない。


どの燐さんが燐さんなのかが。


天使みたいだなって思ったら、イタズラ少年みたいだったり。


どんな燐さんも好き。好きだよ。


幻さんや愁さんは、どんどん燐さんと絆を深めていっているよね。


わたしは?


燐さんとの距離感が、なかなかつかめない。


男の子じゃないから?


ううん、たぶん、違う。


【一億倍キミの方が幻から愛されてるけどね】


わたしが幻さんにいっぱいかまわれているから。

幻さんに、甘えすぎているから。


……それでも。


「わたしは、燐さんが好きです」

「ボクも。大好きさ」

「……!」

「好きだから、変わらないで欲しいと思う」


――変わらない?


「だって、きっとユウちゃんも、他の子みたいになっちゃうんでしょ?」

「わたしが変わらないのは。……難しいと、思います」

「うん。だよね。知ってた」

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