総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「……ダメです」
「知ってるよー。ここでハイって言われたらげんなりしちゃう」
「燐さんは魅惑的です。ダメだとわかっていても、コロッと誘惑されちゃう人がいるの、よくわかります」
「でも、落ちないよね。キミは」
「幻さんが、いますから」
“幻さんを裏切るようなことはしたくない”
その気持ちがなければ、もしかしたら、わたしはとっくに燐さんの甘い罠にハマっていたのかもしれない。
「ユウちゃんは。どうして幻なの?」
そう問いかけられたとき、わたしが幻さんを好きな理由をすぐに言葉で説明することができなくて。
「愁のなにがいけないの?」
「え……」
次の質問が、それ以上に不意打ちで。
「そりゃあ、幻は圧倒的で。あんなやつから可愛がられたら落ちちゃうだろうけどさ。あいつは、あいつの魅力あるでしょ」
いつもなら絶対にそんなこと言わないのに。
愁さんの前で本人を褒めたりしないのに。
ううん。これは。
褒めているというよりは――。
「不器用なところも人間味あるとうか」
(愁さんを応援しているの?)
「どうしても幻じゃなきゃダメなの」
「はい」
「……ふぅん」
「いつか。燐さんにも、そう思える相手が現れるんじゃないでしょうか」