総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
《Side.愁》
「燐」
わかってはいたが、反応がない。
「……まだ、拗ねてんのか? ったく」
昼食を載せたトレイ片手に、燐の部屋のドアノブをさげる。
(鍵、あいてるじゃねーか)
「入るぞ」
ただでさえ偏食だ。
少しは食わせておかねーとな。って考える自分はたしかにオカンっぽいな。
俺もよくやるよな。ほんと。
……自分の母親にさえこんなこと、してもらった試しがないのに。
燐にこの部屋を貸してから入るのは、これが初めてだ。
ユウと一緒に整理整頓していたのは知っていたが――。
「げ。ダンボールだらけじゃねえか」
片付け進んでねーな、おい。
「お前自宅はあんなに綺麗だったろ。なのに人の家は散らかすのかよ」
返事がない。
布団の中にいる燐は、どうやら熟睡中のようだ。
ダンボールをかきわけ、燐に近づく。
「……呑気に寝やがって」
燐の寝顔は、無垢な少年のようだ。
いつも生意気なクセに。
無垢なんて言葉、縁遠いクセに。
……こうして見りゃ可愛いよな。