総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
鬼なんて呼ばれてるが。
噂なら聞く。
目があっただけで半殺しだとか。
……実は女好き、だとか。
そんなのはまったく信憑性のない噂だが。
噂がたえないってのは、それだけ注目されてきたってことだよな。
「愁さあ。オレともう一度キスしてみない?」
「……はあ?」
またそんなこと言いやがって。
「やるかよ。言ったろ。キスとかはしてやれないって」
「一回だけでいいから」
「やなこった」
「すごくしたい気分なんだ」
(……なんだ?)
「どちらか一方の願望でやるもんじゃねーだろ」
「ユウちゃんに抱きしめさせてって言ったキミもこんな感じだったと思うけど?」
――!
「……お前、それ……」
「もちろんユウちゃんから聞いたよ。あの子、なんでも話しちゃうよね。ちょっと教育しておいた方がよくない?」
「ユウは、あのままでいいんだよ。悪気あって話したわけじゃないだろ」
「うん。キミならそう言うと思った」
まさか燐に改めて自覚させられるとはな。
一方的に気持ちを押し付ける俺が、どうかしてたってことを。
あのときユウを抱きしめたいと言ったのは、ただの俺のワガママだった。
けれど、あれがなければ、俺は行き場のない想いを抱え前へと進めただろうか。
そんなに俺は強くなれただろうか。
「後悔、してないんだ?」
「何度も言ってるが。お前のその、なんでもお見通しなところ、マジでムカつくわ」
「愁だからだよ」
「は?」
「興味ないやつの内側なんてどうでもいい。でも、愁のことだから探りたくなるんじゃん」