総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「今日も見逃しちまったか」
厨房に、サトルさんがやってきた。
「おはようございます!」
(見逃した……とは)
「過保護なカレシのツラおがんでやろうと思ったのに。カワサキって言ったか」
「はい!」
「毎回ご苦労なこったな。夕方から降るらしいぞ」
「え……台風は過ぎたんじゃ」
「大雨だとよ」
「そ、そんなあ」
「どーする。電車だと人目あるしな。帰りは、俺が車出してやってもいいけど」
「……え?」
サトルさんが!?
「そんな天気なら店も暇だろうから、お前送るくらい余裕だ」
「そんな迷惑かけられません……!」
「見つかってみろ。その方が迷惑なんだよ」
「へ?」
「俺の弟子なんだろ」
――“弟子”。
「これからしごくってのに、連れ戻されてみろ。師匠は黙ってねーぞ」
「し、しょう゛」
「ん?」
「わたしが、サトルさんの、弟子。サトルさんの……弟子!」
「改めて確認せんでええわ。そして二回いうな」
「大事なことなので!」
嬉しい。
わたし、サトルさんに弟子入りできたんだ。