総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
お昼すぎ
仕事が一段落ついて休憩してると
サトルさんも、事務所にやってきた。
「なあ」
「はい」
「さっき、ここで高校生くらいの女の子が働いてると思うんだけどって尋ねられてさ」
――!
「“いない”って答えようかとも思ったんだが。もしかしたら前にお前が店にパン並べてるところを見たことあるやつかもしれないだろ? だから下手に嘘つくのもなって思って、休みだってことにしておいた」
(誰かがわたしに会いに……?)
「どんな人でした?」
「学ランで、黒髪で、眼鏡で。なーんか、クソ真面目って感じの男だったな」
(ひょっとしたら、愁さんかな……?)
「いつ頃ですか」
「ほんの二、三分前だな」
「背は」
「割と高めだったと――って、おい。ユウ」
愁さんだ。
愁さんが、きっと会いに来てくれたんだ。
テスト前だから帰りははやいって言ってた。
学校終わりに寄ってくれたのだろう。
マスクをしているし。
ちょっとくらいなら。
そんな気持ちで、店前に出て。
商店街に、愁さんの姿を探そうと辺りを見渡した――そのとき。
背後から、名を呼ばれた。
「夕烏」