総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)



急いで車から降りようとした、そのとき。


「……っ!」


サトルさんが――幻さんを、殴った。


なんで。

なんで、殴るんですか。


ねえ、サトルさん。


「二度とツラ見せんな」


サトルさんが、裏口から店に入っていく。


傘は、地面に落とされたまま。


無情にも大粒の雨が、幻さんを打ち付ける。


「……っ、幻さん」


うつむく幻さんから

雨水が滴り落ちていて


まるで、涙を流しているみたいに見えた。


「行こうか、夕烏」


落ちた傘を、拾うと

わたしが雨に濡れないように傾けてくれる。


自分は、ビショビショなのに。

そんなに悲しそうなのに。


「濡れちまったな。しっかり風呂でぬくもれよ」


こんなときにも、幻さんは

わたしの心配をしてくれるんだ。




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