総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「眠い」
「あんたねぇ」
ミラー越しに視界に入る木良は、アイマスクをして完全に視界から入ってくるモノを遮断している。
そんな木良に、なにを言っても無駄だと諦める少女。
「一瞬しか見えなかった。雨、ジャマ」
「どんな子か気になって仕方ないんだね、かすみ」
「そりゃあ。姫《ライバル》だし」
「感想は」
「……たぶん、可愛い。マスクで目元しか見えなかったけどさ」
「幻が溺愛してるって、ほんとなんだ。送り迎えなんてして」
口元を歪める木良。
眠いと答えた割には、少女への皮肉まじりの返答を楽しんでいる。
「友情だの愛情だの。あんな目にあったのに。ぬるいやつだな、鬼の総長は」
少女がバツの悪そうな顔をしたあと
木良に確認する。
「このまま近づけばいいんだよね?」
「うん。よろしく。まあ僕に頼まれなくても近づきたかっただろ。会わなくなってからも、ずっと」
「…………」
「昨日、幻の家に行って。再会を果たして。朝まで二人きりで過ごして。盛り上がった?」
「…………」
「聞かせてよ。そのときのハナシ」
「うるさいなぁ。もう寝ていいよ」
「全て終わったら、君がなればいい」
「は?」
「幻の女に。なりたいんでしょ」