総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


「眠い」

「あんたねぇ」


ミラー越しに視界に入る木良は、アイマスクをして完全に視界から入ってくるモノを遮断している。

そんな木良に、なにを言っても無駄だと諦める少女。


「一瞬しか見えなかった。雨、ジャマ」

「どんな子か気になって仕方ないんだね、かすみ」

「そりゃあ。姫《ライバル》だし」

「感想は」

「……たぶん、可愛い。マスクで目元しか見えなかったけどさ」

「幻が溺愛してるって、ほんとなんだ。送り迎えなんてして」


口元を歪める木良。

眠いと答えた割には、少女への皮肉まじりの返答を楽しんでいる。


「友情だの愛情だの。あんな目にあったのに。ぬるいやつだな、鬼の総長は」


少女がバツの悪そうな顔をしたあと

木良に確認する。


「このまま近づけばいいんだよね?」

「うん。よろしく。まあ僕に頼まれなくても近づきたかっただろ。会わなくなってからも、ずっと」

「…………」

「昨日、幻の家に行って。再会を果たして。朝まで二人きりで過ごして。盛り上がった?」

「…………」

「聞かせてよ。そのときのハナシ」

「うるさいなぁ。もう寝ていいよ」

「全て終わったら、君がなればいい」

「は?」

「幻の女に。なりたいんでしょ」

< 267 / 271 >

この作品をシェア

pagetop