総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
ブルル。
ポケットの中で小刻みに揺れるのは、携帯電話。
取り出し、画面を確認する。
「あ……」
表示されているのは、勤め先の電話番号だった。
(スミレさん……かな)
家出少女を雇っているなんて世間に知れたら、お店に多大な迷惑がかかる。
まさか、この電話で
クビっていわれるんじゃ――。
「もしもし」
わたしが電話に出ると、その場がシンと静まり返った。
愁さんも燐さんも、こっちを見ている。
幻さんは、まっすぐにどこか一点を見つめている。
『……なに有名人になってんだよ』
その声は、
「サトルさん……!?」
『今、電話してて平気か』
周りを見渡したあと、
「はい」
電話相手に、こくこくと頭を縦に振りながら頷いた。
『明日からのことなんだが』
「……はい」
明日から
来るなって、言われてしまうんだろうか。
唇をギュッと噛みしめ、サトルさんの言葉を待つ。
『ぜってえ裏口つかえよ』