総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
エントランスから漂っていた高級感。
「お待たせ」
――俺は、ある場所に初めて足を踏み入れた。
(こんなところに来ることになるとはな)
落ち着かない無駄に広い部屋で(うちも広いがそれを上回る。家賃いくらするんだ?)待機していたのだが。
「……どうしたの? 愁くん」
知らない女子が、俺に向かって歩いてくる。
(なんだこの展開)
「なんでそんなに驚いてるの? リラックスしていいよ。そうだ。マッサージ、してあげようか。こってそうだよね」
……いや……。
「テメェ……燐だな」
「せいかーい。よくわかったね?」
わかるもなにも。
ここ、お前の家じゃねーか。
「なんつー格好してんだよ」
一瞬本気で別人に思えたのは、現れた燐が長い黒髪だったからだ。
「それ、ヅラか?」
「ウィッグって言ってよー」
「信じらんねぇ」
どこからどう見ても、女子。
メイクのせいで顔も違う。
「マジで性転換したみたいだな」
「だからー。天使に性別は、ないんだってば」
「キモい」
「愁くんが、ボクを完全に女の子にしてくれてもいいんだよ……?」
潤んだ瞳。上目遣い。
長いまつ毛は、おそらくは地毛だろう。
「初めてだから。優しく……してね?」