総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「ところでさ。今日の“オレ”どう思う」
「……は?」
「似せてみたんだよね。雰囲気。タレ目メイクもそうだし。テーマをつけるなら、ズバリ“愛されウサギ系カノジョ”」
胸がざわつく。
少し離れた賑やかな通路からざわつく客の声が聞こえてくるが、なぜか別世界のようにそこが遠く感じた。
「この姿でキミの前に現れたとき。キミは目を見開き驚いた顔をしていたね。どうしてかな?」
【お待たせ】
――長い黒髪が、そこにいるはずのない、あの子みたいだなと思った。
背丈はおろか、ふと見せる仕草や表情が
どこかあの子をチラつかせた。
なにも燐のせい、というわけじゃない。
ここ数日、ずっとそうだ。
――俺は気づくとユウのことを考えている。
退屈な学校で優等生演じているときも。
通学中も。
夜、眠りにつくときも。
無意識のうちに
俺の頭の片隅に、ユウがいた。
「ねえ、愁。キミはユウちゃんのことを妹だなんて思っていないんじゃないの?」
耳元で囁かれた声は、悪魔の囁きのようで。
「違う。俺は――」
「知ってる? こういう気持ちってさ。気づいたが最後なんだ。どんどん加速して。止めたくて止められるものじゃなくなる」
俺の中に黒く渦巻く感情を、呼び起こす。
「認めちゃいなよ」
「っ、なに言って――」