総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「幻、さん」
「俺を信じろ」
「……っ」
「幻さん」
「ああ。どうした、夕烏」
「強く、抱きしめて欲しいです」
いつも、宝物を守るみたいにそっと包み込んでくれるあなたに。
今は痛いくらいに抱きしめられたい。
「……お願い、します」
わたしの言葉で幻さんの腕に力がこめられる。
「もっと」
「よせ。……壊してしまいそうだ」
「壊して欲しいです」
「!」
これまでの、わたしなんて。
壊れてしまえばいい。
「夕烏」
わたしから少しだけ身を離す幻さんに、顎を持ち上げられる。
――目と目が合った。
「夕烏」
「……幻さん」
「横になるか」
「…………」
「話ができるようになるまで。横になってるか」
「幻さんは?」
「隣にいる」
「…………」
「寝床まで運んでやろう」
そう言うと、わたしを、あっという間にお姫様抱っこしてしまった。
「……軽くなったんじゃないか」
「幻さんにはお手上げです。なんでもわかっちゃうんですね」
「ヨーグルトとゼリー、買ってきた。冷蔵庫に冷やしてある。食えそうなら持ってきてやるが」
お見舞いの品まで。用意してくれてたんですか。
「パピコは買いました?」
「忘れたな」
「大好物なんですよね……?」
「はは。夕烏のことばかり考えていたからだな」