総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
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気づけば化粧品売り場にいた。
今更ながらに独特の香りが鼻につく。
「……とっとと選んで帰るぞ」
「急かさないでよー。ボクとのデート楽しいでしょ?」
「1ミリも楽しくねーわ」
燐は、いつもとなにも変わらない。
ふざけていて。
調子がよくて、適当で。
――だが、俺は違う。
【認めちゃいなよ】
なにをそんなに気にすることがある。
燐が目障りなのも
あいつの言うことなすこと癇(かん)に障るのも、わかりきったことだ。
まともに受け答えする必要などない。
なのに、燐のあの発言に
【キミはあの子が欲しいんでしょ】
――俺は、動揺を隠すことができなかった。
燐は、そのあと俺を挑発し続けることもなく
『そんじゃ。買い物続行しようか』
上機嫌でそんなことを言った。
切り替えよう。
……忘れるんだ。
「これと、これにしよっと」
やっとユウのメイク道具を揃える気になったらしい。
「これがなにかわかる?」
「顔に塗るやつだろ。パタパタするやつ」
「パタパタだってー。あはは」
「なにがおかしい。つか、そのファンデーションとかいうやつ一つじゃ足りないのか?」
結構いい値段するが。
「二つは欲しいかなー」
燐の中には今頃別人に化けたユウのイメージでもわいているのだろうか。