総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)



 ◆



気づけば化粧品売り場にいた。

今更ながらに独特の香りが鼻につく。


「……とっとと選んで帰るぞ」

「急かさないでよー。ボクとのデート楽しいでしょ?」

「1ミリも楽しくねーわ」


燐は、いつもとなにも変わらない。

ふざけていて。

調子がよくて、適当で。


――だが、俺は違う。


【認めちゃいなよ】


なにをそんなに気にすることがある。

燐が目障りなのも

あいつの言うことなすこと癇(かん)に障るのも、わかりきったことだ。


まともに受け答えする必要などない。


なのに、燐のあの発言に


【キミはあの子が欲しいんでしょ】


――俺は、動揺を隠すことができなかった。


燐は、そのあと俺を挑発し続けることもなく


『そんじゃ。買い物続行しようか』

上機嫌でそんなことを言った。


切り替えよう。

……忘れるんだ。


「これと、これにしよっと」


やっとユウのメイク道具を揃える気になったらしい。


「これがなにかわかる?」

「顔に塗るやつだろ。パタパタするやつ」

「パタパタだってー。あはは」

「なにがおかしい。つか、そのファンデーションとかいうやつ一つじゃ足りないのか?」


結構いい値段するが。


「二つは欲しいかなー」


燐の中には今頃別人に化けたユウのイメージでもわいているのだろうか。

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