総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
【あの子が欲しいんでしょ】
忘れようと思ってもいつまでもその言葉がまだ頭にチラつく。
俺が? ユウを?
ふざけんな。
俺は、とっくになにかを欲しがることを諦めた人間だ。
ましてや。
ユウは、あの男の――。
(クッソ……)
――ドン。
誰かにぶつかられた。
「きゃ、ごめんなさい……!」
「いや。こちらこそすまない」
「ちゃんと、前。見てなく……て……」
そう言いながら俺を見上げるのは、ミルクティーみたいな髪色の女子だった。
年は同じくらいだろうか。
胸元まで伸びた髪をふわっふわにセットしていて、さすが化粧品売り場にいるだけあってメイクバッチリ系女子という感じだ。
いやバッチリの定義は知らねーけど。雰囲気的に、まあ、そうなのかなと……。
で。
なにを言うわけでもなく俺を見つめているが。
(なぜだ?)
「…………」
「…………」
数秒無言で見つめ合ったあと、
「ま、まってよぉー」
女子は、小走りをして行ってしまった。
向こうに友人でもいるのだろう。
……未知。
「脈アリだね」燐が目線を商品の棚に向けたまま、ぼそりとつぶやいた。
「は?」
「今の子」
燐は、あの子が俺に気があると言いたいのか?
「ねえだろ」
おおかた、俺みたいなのがこんなキラキラした店にいてビビったんじゃねーの。
自分で言うのも虚しいが、人相良くはねぇし……。
外に出て、燐が買い物済ませるまで待っていようか。
「ぜったいヤれるよ」