総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
――ドブネズミ?
「価値ないとか。そんな話をしてるんじゃねーだろ」
「してるよ。シネって言われた気分」
「俺はそんなつもり微塵も――」
「これだから世間知らずのおぼっちゃまは」
「なんだと?」
「一緒にいると、ほんとに虫唾が走る」
なにキレてんだよ。
「燐、」
「あれー。燐くん?」
店の奥から顔を出した店員が、燐に声をかける。
「エミリちゃん。やっほー」
途端に、いつものアイツに戻りやがる。
俺に向けられていた敵意は跡形もなく消えてしまった。
「来てたなら声かけてよ。今日は女の子なんだ?」
「まあね」
「いつもありがとう」
「こちらこそ。ここの化粧品、どれもプレゼントに喜ばれるからハズレないんだよねぇ」
なるほど、ここは燐の馴染みの店ってわけか。
燐がときに女装男子になるってことも女性にプレゼントをよく買うことも把握してるなら、今日ここで大量の化粧品を購入することは特別おかしな行動にもうつらないだろう。
「そのイケメンは?」
――目があった。
ニコリと微笑むと、笑顔をキープしたまま、すぐに視線は燐へと戻された。
「カレシ」
(!?)
「ほんとに?」
「さらっと嘘つくなや燐」
「なんだ。ちがうのか」
エミリと呼ばれた女性は、ショートカット似合う、背がそんなに高くはない人物だった。
年は、二十代前半くらいだろうか。
サバサバしているわけではない。
でも女子特有の、なんつーか、ふわふわした雰囲気がまるでない。
「エミリちゃんはね、ここの店長さんだよ」