総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
「ユウちゃーん。元気ないね?」
「……!」
「まあ、これだけ自分のことが世間で騒がれたら。……っていうよりは“見世物”扱いされちゃげんなりしちゃうよねー」
「……いえ。報道してくれている方は、わたしの無事を祈ってくれていて。本当は誘拐とかじゃないのに心配してくれて、心苦しいです」
捜索にあたってくれている人たちにだって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
(……スミレさんとサトルさん、どうしてるかな)
スミレさんの方から、
『休んでなさい』と電話があった。
(……サトルさん、ビックリしただろうな)
パン屋のオーナーさんであるスミレさんは、わたしの事情をいくらか知っていた。
でもパン職人のサトルさんには、なにも知られていない。
話題の失踪少女がわたしなんて、すごく驚いたんじゃないかな。
『辞めちまえ』
追い出される未来が予想できなくもない。
そう考えると余計に落ち込んでしまう。
これは、わたしの責任。
それでも。
あのお店が好きだ。
できるものなら、これからも働かせてもらいたい。