総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)
燐が駐車場にやってきたのは
それから三十分ほどたった頃だと思う。
はかっていないので正確にはわからない。
もっと長かったかもしれないし、すごく短かったかもしれない。
そんなことどうでもいい。
「ちょっとー。酷くない? 女の子置いてくなんて」
コツコツと、ヒール音が響く。
――来るな。
「ダメじゃん。荷物はオトコが持たなきゃ。嫌われちゃうよ」
今、俺に話しかけるな。
「あれ。今度はツッコミ入れてくれないの? いつ性転換したのーって」
しゃがみこんだ俺の前に立つ。
「愁くーん。買い物の途中なんだけど」
「…………」
「っていうか。なに吸ってんの。辞めたんじゃなかったの」
ユウとの約束を、初めて、破った。
「さすがにこの時間から。ここで吸うのはヤバくない? あは。まともな判断できないくらい余裕ないの?」
「……なにがしたいんだよお前」
幻とユウのこと二人きりにして。
ユウみたいな格好して。
俺とデートまがいなこと始めて。
俺に幻とユウの邪魔させるような発言して。
「寂しいガリ勉くんに。受験勉強以外のこと、教えてあげたくなったんだ」
「余計なことするな」
「何回考えたの」
「は?」
「今日。なにげなくユウちゃんのこと、何回考えた?」