あなたの愛になりたい
軽蔑を孕んだ、うつろな眼が私の顔を捉えている。
“顔に光る物を見た”という私の言葉が、彼にそれを思い出させたのだろうと容易に想像ができる。
「山仕事に出掛けたはずなのに、知らない間に倒れていた。朝方出掛けたはずなのに気がついた時にはもう日も暮れようかというときだったよ。その時、目の前にいたのがリョウという名の女のヴァンパイアだった。俺をこの体にした張本人だ」
表層をなぞるだけのその言葉に、この人は一生を狂わされたのだろう。
それまでの平凡で温かな幸せが、自分自身の崩壊とともに崩れ去る様をこの人は身をもって体験してきたのだろうと思うと、その視線が痛い。
口許に見える牙がこの人の言葉の重みを伝えてくる。
この言葉が真実だと、その瞳が訴えてくる。
それが痛くて、私は目を逸らした。
緊張を解くように、フッと、小さな笑い声が聞こえた。
「自分の変化に戸惑ったよ。腹が減るというよりは、喉が渇く。感じたことがないくらい、異様にな。体に力が入らなくて這うようにして近くの川まで行ったな。それなのに、川の水を飲んでもその渇きは収まらねぇ。原因もわからない異常な渇きに耐えて何日たったんだろうな?ふと森の中にやってきた人間の放つ匂いの甘いこと」