あなたの愛になりたい

大通りに面するこの店からは、街の風景がよく見える。
日曜日らしく忙しかったランチ営業を終え、今は中休憩時間だ。
街を流れるあのコスプレ……もとい、ハロウィーンを楽しんでいる人たちが少なからずこの店にも立ち寄るのだろうと考えると少々げんなりした。

「店長、あれもある意味リア充というやつでしょうか」
「とっても真顔で言ってくれるね、佐川さん」
「爆発したらいい……」
「自分の失恋を他人にぶつけるもんじゃないよ」

なんともやるせない。
日曜のカフェなんて来るのはカップルが7割だ。
つい2週間前までなら心穏やかにいられたものだけど、つい1週間ほど前にあっさりメッセージでフラれたばかりの私がやさぐれるのは仕方がないと思っていただきたい。

「いいんですけどね。ついにきたかって思ったし」
「良いじゃないか。沢山恋して、失恋していい女になれよ」
「適当だなぁ」

くす、と笑いながらまるで雇われている側とは思えない言いぐさで返すと、店長は事も無げに言う。
こういうラフな所が気に入っている。

「真面目に仕事してくれるなら何でもいいよ、僕は」
「何があっても、仕事は真面目にしますよーぅ」
「その意気だ。さ、お店開けるよ」
「はーい」


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