あなたの愛になりたい
間もなく、お店もラストオーダーを迎える時間だ。
まだ店内に残るお客さんを尻目に、さくさくと片付けの準備を開始する。
ゴミを纏めて、裏口から細い路地へと出る。
この頃は夜風が気持ちよく……どころか、寒くなってきたな。
ふるふると肩が震えて、風邪を引いてはたまらない、とゴミを捨てに急いだ。
ふと、路地の抜けた先を見やるとそこは大通り。
日曜の夜だと言うのにまだまだハロウィーンナイトを楽しむ人たちでせわしない。
「まるでまだ土曜の夜みたい…」
ポツリと呟いた。
人波はせわしなく、それ自体はいたっていつも通りだ。
コスプレを除けば、見慣れた風景だと言えなくない。
あの人混みの中のどこかに、私の癒しは落ちていないか、なんて考えたくなる始末。
心が荒みきってる。
気を取り直して、ゴミ箱の蓋を開けようとして、いつもと違う“それ”が目に入った。
見慣れた風景の中に、見慣れない“それ”。
一瞬、我が目を疑った。
あ、れ?私……いつも通りにゴミ出しに来たんだよね?
頭が混乱してお店に続く扉と、大通りと“それ”に視線がいったり来たりとさ迷う。
何度確認したってまごうことなきうちの店のごみ捨て場だ。
ていうか、店の裏口を開けてこの路地以外ないし、離れているわけでもないのだから、間違えようがない。
とりあえずはこのてに持っているゴミをゴミ箱に棄てて、目を閉じる。
よし、きっといつも通りだ。
ゴミ箱の横には特に何もなく、汚れた壁があるだけ。
いざ、目を開けると、ほらいつも通り!
……じゃ、ないよね、やっぱり。
変わらない光景に、仕方なくため息が溢れた。
一体なんだってこんなところで。