【短編】井上さんの毛先が今日も


好きになってしまったけど、触れたいと思ってしまったけど、どうしていいのかわからない。


告白なんて、脈があるかどうかある程度わかった上でするものだと思うから。


自分のことどう思ってるかわからない人に突然告白なんて、そんなもの漫画や映画だけの話で、実際はお互いになんとなくそういう雰囲気を察してできるものだと思うから。


井上さんと、お近づきになりたい。







「あー、サイフ忘れた」


放課後、靴を履き替えてあと少しで校門を出るってところで忘れ物を思い出して、来た道を戻って校舎に向かう。


だるい。


こんな時、好きな人とすれ違えたりしたら気分も変わるんだろう。


重い足取りで教室までの階段を上り、ガラッと引き戸を開ける。


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